自称「頂き女子」の「りりちゃん」が詐欺罪で逮捕された事件は、記憶に新しいのではないでしょうか。マッチングアプリやSNSが広く使われるようになり、お金に困った若い女性が簡単に詐欺に手を染めるようになったことに驚いた男性も少なくないかもしれません。
今回はこの「頂き女子りりちゃん」の事件を通して、40代~50代の男性が詐欺の被害者にならないようにするにはどうしたらいいかを考えていきます。
頂き女子りりちゃん事件とは
最初に、この「頂き女子りりちゃん」の事件とはどのようなものだったのかを見て行きましょう。
「頂き女子」りりちゃんとは
「頂き女子りりちゃん」は、2021年3月頃から中年の男性に嘘をつき、合計1億5千万円をだまし取ったとして2023年9月に逮捕されました。その後、2024年4月に行われた裁判で「詐欺」と「詐欺方法のマニュアルを売って詐欺の手助けをした罪」によって、懲役9年・罰金800万円の判決が言い渡されました。
拘留中にりりちゃんは多くのマスコミと接見し、生い立ちや心情などが広く知られるようになるにつれて同情的な意見も見られるようになります。ただ、多くの人は「犯した罪はやはりきちんと償って反省して欲しい」と思っているようです。
その後、5月1日には一審での判決を不服として控訴しました。そのため、刑が確定するのはまだ少し先になります。
頂き女子マニュアルは大量の詐欺師を生み出した
詐欺の内容以上に多くの人の関心を集めたのが、りりちゃんが作成・販売した「頂き女子マニュアル」です。すでに公になっており、多くのメディアで詳細に伝えられていますが、その内容に驚いた人も多かったようです。
マニュアルは1冊1~3万円程度で1000人以上が購入し、実際にマニュアルどおりに詐欺を行った女性も少なくなかったとのこと。SNSなどで「○○円頂きました!」といった報告をしている女性もいました。彼女たちに「自分は犯罪を行っている」という意識がどの程度あったのかは分かりませんが、結果として若い女性詐欺師を大量に生み出すことになったことは間違いないと言えるでしょう。
頂きマニュアルに出てくる「おぢ」3タイプ
このマニュアルの中では、ターゲットの中年男性(おぢ)を以下のように3種類に分類しています。
- テイカーおぢ(クソおぢ)
- マッチャーおぢ(中間)
- ギバーおぢ(良おぢ)リスト
「テイカー/マッチャー/ギバー」はアダム・グラントによる「Give and Take(ギブ・アンド・テイク)」という書籍で紹介されたもので、職場や日常生活における人々の行動スタイルを説明するものです。
以下で詳しく説明しましょう。
ギバー(Giver)
ギバーは、他人に対して無償で助けや支援を提供することを好む人のことで「自己犠牲型」と「他者思考型」の2種類があります。
「自己犠牲型」はその名のとおり自分の利益や幸福を後回しにしても他人に尽くす傾向があり、過度な奉仕をして燃え尽きたり、自分のニーズを無視した結果、自己価値が低下したりしがちです。
一方「他者思考型」では自分と他人のバランスを取りながら助けることができるタイプで、他人への貢献を重視しながらも自分の健康や幸福も大切にします。
3つの概念の中でこのギバーが最も幸福になりやすいと説明されていますが、やはりバランスの取れた「他者思考型」を目指すことが大切です。
テイカー(Taker)
テイカーは、主に自分の利益を最優先に考える人のことです。他人からできるだけ多くの時間・エネルギー・情報・援助などを得ようとし、自分の成功や利益を追求しようとします。他人を利用することを厭わず、与えるよりも受け取ることを重視する傾向があります。
短期的には成功することがあっても、長期的には信頼を失い、人間関係が崩れることが多いのが特徴です。
マッチャー(Matcher)
マッチャーはギバーとテイカーの中間で「与えた分だけ受け取り、受け取った分だけ返す」のが基本です。助けを求められれば協力しますが、その見返りを期待します。
安定した関係を築きやすいですが、大きな変革や飛躍を生むことは少ないかもしれません。
頂き女子からみたターゲット男性の特徴
前章で説明したように、「(頂き女子からみた)良おぢ」と呼ばれるギバーがターゲットになりやすいことは想像がつくと思います。では、彼女たちは男性のどういった言動からタイプを判断しているのかを確認していきましょう。
テイカーおぢ(クソおぢ)
頂き女子が避ける男性の「テイカーおぢ」。マニュアルでは「このタイプを引っ掛けてしまうと時間をロスしてしまい、99%頂けない」としています。代表的な言動は以下のようなものです。
- 自分の欲を満たす事だけを考えている
- 上から目線で話してくる
- 自慢話ばかりしてくる
- 人の話を聞かない
- 趣味にたくさんお金を使っている
- 女の子のことを見下している
こちらに当てはまる男性は詐欺には引っかからないかもしれませんが、婚活において嫌われる男性の特徴でもあるので注意してください。
マッチャーおぢ(中間)
マニュアルによるとこのタイプが一番多く「一定の信頼関係を築けていれば50〜250万くらいなら頂ける」と説明されています。代表的な行動は以下のようなものです。
- しっかりとした信頼関係を構築していれば「いつも僕と話してくれて元気をくれるから、この子が困ってるならお金を渡そう」という思考になりやすい
- 信頼関係が築けていない場合は、反対に「これだけしてあげているんだから…」と見返りを求めることもある
いわゆる一般的な男性なので、相手の手口が分かっていればカモにされずに済むでしょう。
ギバーおぢ(良おぢ)
頂き女子に最も狙われやすいタイプで、「とりあえず神なのでこのおぢを手に入れたら頂き無双できる」と記載されています。ギバーおぢの特徴は以下のとおりです。
- 独身
- 普通のサラリーマンが多い
- 夢や希望がない
- 寂しいと感じている
- 癒しを欲しがっている
- 恋愛経験が少ない
- 自分の話を聞いてくれるような人がまわりにあまりいない
ガツガツしておらず、見た目にもおとなしそうな男性という印象ですね。女性とあまり積極的に話せず、お付き合いの経験もないことから「女性に夢を見ている」タイプといっていいのではないでしょうか。
頂き女子がアプリで狙うおぢの特徴
頂き女子がおぢと出会うのは、男性客が多いキャバクラや風俗店などが挙げられます。しかし、マッチングアプリなどを利用している頂き女子も少なくありません。アプリの場合はプロフィールに以下のような記載がある男性が狙われやすくなっています。
- 40代以上
- プロフ写真がキメ顔じゃなくて撮りなれてないぎこちない自撮り
- 最初は敬語で話してくれる
- 年収1000万以下設定
- 馴れ馴れしくない
- 自分からLINE移行を誘ってこない
アプリなどで婚活をしている男性の場合、プロフィール写真は写真館やプロのカメラマンに撮ってもらったものを掲載し、適度に積極性を見せることで撃退することが可能です。なお、カメラマンでなくても趣味で写真を撮っている人やココナラのようなスキルマーケットなどでカメラマンを探すという方法もあるので試してみるてください。
頂き女子の行動を知ってカモにならないためには
頂き女子は出会ってから段階を踏んでターゲットとなる男性と信頼関係を築いていくことが分かっています。ここではその過程を紹介していきますので、もし似たような流れになったら注意してください。
第一段階:相手と仲良くなり特別だと思わせる
頂き女子は最初から詐欺だと分かるような行動をしてきません。ギバーの男性が欲しているものを与えることで、頂き女子がなくてはならない存在になるように言葉巧みに誘導してきます。例えば以下のようなことで心を捕えようとしてきます。
- 最初から恋愛を匂わすような行動はしない
- 会った時はすごく喜んで見せる
- ときどき焼きもちを焼く
- 会えないと寂しいという
- LINEを毎日送ってきて、返事を返すととても喜ぶ
第二段階:お金に困っていることを伝えてくる
頂き女子はあからさまに物をねだるようなことは絶対にしません。毎日来ていたLINEが来なくなったり、会った時に暗い顔をしたりして相手の反応をうかがいます。何があったのかと聞いてもすんなり話すことはせず、何度か聞いた後で「○○さんだから話すけど…」などと男性が特別な存在であるような話し方をしてきます。
内容はさまざまで、「具合が悪くて働けずに家賃を滞納している」「借金があるが、家まで借金取りが押しかけてきて怖い」「自分や家族が病気でお金を貯めていたがどうしても足りない」などが多いですが、とにかくトラブルがあってお金に困っていることに違いはありません。また、最初は援助を断るなど「自分で何とかしよう」という姿勢を見せることで、相手に「何とかしてあげたい」と思わせるのが特徴です。
なお、頂き女子は出会った時から「自分がどういうキャラクター設定なのか」をしっかりと作ってきており、情報を小出しにしながら相手に信用させようとしてきますので、なかなか見抜くのは大変かもしれません。ただ、これが詐欺である以上、お金に困っていると言われた時点で詐欺である可能性を疑うべきでしょう。
第三段階:一度お金を出したら次のための布石を打つ
頂き女子は最初から大金を出させようとはしてきません。比較的少額(1~5万円程度)を受け取ったら「○○さんのおかげで本当に助かった!やっぱり相談して良かった!」などと大喜びしてきます。それを見た男性は「自分が助けてあげてよかった」という満足感でいっぱいになります。男性にこういった幸福感を維持させることで次へとつなげていくのです。
しかし、時間が経つにつれて金額が段々と大きくなっていきます。そこで相手に「詐欺だ」と思われてはいけないので、頂き女子たちはあの手この手で男性の気持ちを満足させようとします。しっかりと相手の心を掴み、今まで以上に親密な関係を続け、より高額なお金を出してもらうように準備を欠かしません。
とにかく、一度出してしまったら自分で逃げ出さない限り逃れられないと肝に銘じておいてください。
恋愛詐欺ってどんな詐欺?
最後に恋愛詐欺について説明します。どういった行為が詐欺に該当するのか理解し、事前に避けることができるよう気を付けてください。
恋愛詐欺と結婚詐欺の違い
恋愛詐欺は「恋愛関係になるつもりがないのに、恋愛感情があるように見せかけて金品を奪う行為」です。詐欺に該当するには以下の3つの条件に該当する必要があります。
- 嘘をついて相手に金品を出させること
- 相手が嘘を信じていること(相手が嘘だと分かっている場合は詐欺にならない)
- 実際に金品の受け渡しがあること
結婚詐欺もほとんど同じで、「結婚するつもりがないのに、結婚する気があるように見せかけて金品を奪う行為」となります。「恋愛ごっこ」をしている最中に相手が結婚を意識することも多いですが、最初から結婚を意識させないものが恋愛詐欺ということになります。
パパ活と頂き女子の違いとは?
以前は、パパ活はデートをしてお金などをもらうことを指しており、性交渉を伴うものを援助交際と呼んでいました。しかし、現在ではその線引きはないに等しくどちらもパパ活と呼ばれていることが多くなっています。デートだけの場合は特に犯罪性はありませんが、性交渉を伴うものは相手が成人であっても違法になる可能性があります(ただし男女ともに成人であれば罰則はありません)。
一方の頂き女子は間違いなく詐欺ですので、捕まれば刑事裁判が行われます。詐欺罪は「10年以下の懲役刑」とされていますが、マニュアルを読んで実行した場合は「計画的な犯行」とされて初犯でも実刑判決が下される可能性が非常に高いと考えられます。
世の中が不景気になり物価も上がっていることから、パパ活から頂き女子にシフトする女性も増えています。どのような出会いであっても気を抜かないことが大切です。
まとめ:ターゲットになる男性は恋愛対象外!
皆さんの中には「40代はまだまだ若い!」と思っている方も少なからずいるかもしれませんが、20代女性から見れば立派なおじさんです。つまり、一般的な20代女性から見れば、40代50代の男性は恋愛対象でも結婚したい対象でもないと理解しておくことが大切です。多くの女性が求めるのは同年代だということは覚えておいてください。
また、被害を受けた男性に対しても厳しい目が向けられがちです。ニュース記事のコメントやXなどでも「おじさんが若い子と付き合えると考えている方がおかしい」といった意見が多く見られます。年の差婚が可能な男性はごく一部。自分なら大丈夫だという過信は禁物です。
マニュアルの本文を読んでみたいという方は、以下のリンクから見ることが可能です。
『1ヶ月1000万頂く頂き女子りりちゃんの【みんなを稼がせるマニュアル】』
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