医師が婚活市場で人気の秘密はどこにあるでしょうか?その理由を多方面から以下で考えてみましょう。
婚活における人気職種ランキング
婚活市場における男性の人気職種はどのようになっているのでしょうか?近年のランキングによると1位は公務員、2位は会社員、3位は医師となっており、医師の人気は高い地位を保っているようです。
男女が結婚を決めるファクターにはいろいろな種類のものがあります。女性によって相手の男性に求めるものは様々で、たとえば価値観、性格、出身地、兄弟構成、育った家庭環境、年齢、年収、家事能力などが挙げられます。ただ、一般的傾向としては男性側に年収を求める女性が多いでしょう。これにも当然ながら幅はありますが、近年は婚活女性が求める平均年収の目安として400-500万円くらいを希望する方がボリュームゾーンだと言われています。
一方、適齢期男性の平均年収は対照的に年々下がっています。そのため、この目安となる400-500万円をクリアできる男性のボリュームゾーンが徐々に減っているようです。したがって、医師が婚活市場で人気の職業のひとつである理由として、その平均年収がまず第一に挙げられるでしょう。
社会的評価も高い医師
医師が婚活市場で人気の職業である理由は所得だけではありません。それは、婚活市場においてもうひとつの大事な要素である社会的評価が高いということです。分かりやすくいえば、どれだけ高収入の男性であったとしても、その方が社会的イメージの芳しくない職業に就いている場合、求める女性の数はあまり多くはないでしょう。
その点、医師は他の高収入の職業と違い、婚活市場で人気の高い高学歴や公務員のような安定性がセットで担保されます。今後ますます加速する少子高齢化の時代において、医者という職業が不要になる可能性は非常に小さいことが背景にあります。よって、保守的傾向を好む日本の親世代には好まれるケースが非常に多いです。場合によっては、医者という職業に「地味で堅実な性格」のような、結婚する男性が備えているとさらに好ましいとされる特徴が暗黙のうちに期待されるケースも多いでしょう。
コロナ禍で評価は急上昇
折りしも今回のコロナ禍によって、基礎的な感染症にさえ人類はまだまだ太刀打ちできないことが明らかになりました。それによって、医療従事者たちの献身的な活躍が連日報道されフィーチャーされ大きな話題にもなりました。また、事態収束の頼みの綱となるワクチンや治療薬の開発も製薬分野の研究者だけでなく、現場の医師の手にかかっています。公衆衛生分野では人混みでの感染を避けるための数理シミュレーションが広まるなど、かつてないほど一般の方にとっても医学領域が広く有用なことや、身近な医学的知識の必要性が周知される機会になりました。また、近年ではiPS細胞の発見などノーベル賞を受賞する医学者さえ現れ始めています。
このように、人々は社会的危機におけるわかりやすいヒーローを心理的に求めています。医師の職業としての人気や社会的評価が急上昇していることは婚活市場における人気にもつながっているようです。
人生100年時代によるライフスタイルの変化
近年、「人生100年時代」のキャッチフレーズとともに、来る長寿社会に合わせてライフスタイルを適応することが話題になりました。これまでのように平均寿命80年の社会では定年後に余生を楽しむライフモデルが一般的でした。ところが「人生100年時代」の到来とともに定年という概念はなくなり、セカンドステージにおいても別の職業で働き続けるスタイルが求められることになったのです。
このような近未来社会では男女ともに平均寿命が100年を超えることになります。すると当然ながら、これまで以上に個人の肉体がロングスパンの生活を支える資本となります。こうした人生観のドラスティックな変化に適応するためには、人体に関する深い知識とケアのノウハウが人々に要求されます。食事や運動に気を使う近年のヘルシー志向やオーガニックフードの流行は、まさにこの潮流に乗っているといえます。
そうした意識改革に伴い、職業としての医師に求められる役割も大きく変わりつつあります。従来のイメージでは、医師には日常的な風邪や感染症などの治療、あるいは高齢に伴う病への直接的な治療が求められていました。ところが、これからの人生100年社会においては、体の保全と老化防止を目指したアンチエイジングや生活習慣病の予防がますます重要な役割を担います。超高齢化社会では終末期医療やQOL向上、患者への寄り添いに至るまで求められる社会的役割がこれまでになく広がっています。
このように新たな高齢社会へのスピーディーな移行の中で、社会における医師の位置づけがさらに身近で、さらに認知度が高まっていることは婚活市場での人気を押し上げる社会的要因になっています。
近年の婚活市場の動向とその背景
医師が婚活市場で人気の職業である理由を考えるには、近年の婚活市場動向の観点も欠かせません。未婚化・晩婚化が顕著に進行している現在、婚活市場における競争はますます激しくなっているようです。データをみると、日本人の生涯未婚率の上昇は1985年以降増加の一途をたどっています。これは男女雇用機会均等法が1985年に制定されたことと関連があるようです。
2019年には男性の生涯未婚率はとうとう23.4%に到達しました。男性の5人に1人が未婚というわけですが、このまま行けば2030年には3人に1人にまで増加すると予想されています。一方、女性は2019年に14.1%となり、約7人に1人が未婚というわけですが、このまま行けば2030年には5人に1人にまで増加すると予想されています。
未婚男女がかつてなく増大する社会的背景の主な理由は将来への経済的不安です。未婚化・晩婚化のみならず、2019年の出生数は過去最少の86万5,234人で出生率は1.36となり、少子化も進んでいます。子どもを産まなくなった社会情勢の変化や近年のめざましい医療の発達によって、少子高齢化が年々劇的に進みました。それにより、年金などの公的な社会保障制度の基盤が崩れ始め、多くの適齢期の若者は将来への経済的不安を抱えています。若者の結婚への心理的な忌避が少子化を呼び込み、それによって経済不安が増大するという悪循環のサイクルにあるとも言い換えられます。
さらに、子どもにかかる教育費の負担増加もこの動きに拍車をかけています。出生率は低下の一方ですが、 結婚意思のある未婚者が希望する子ども数の平均値は依然として2人を保っています。このことから、将来必ず降りかかるであろう教育費の負担増は経済面での心理的不安を一層あおっているようです。
増え続ける婚活サービス利用者
こうした状況下で2019年の婚活サービス利用経験割合は23.5%となっており、約4人に1人が婚活サービス利用経験があるという調査があります。2017年の調査開始以来、利用経験者は増加し続けており(2017年15.6%→2018年18.1%→2019年23.5%)、男女や年代を問わず割合が増加していることも特徴的です。
婚活を始める女性側の理由に特化すると、「理想が高すぎてチャンスを逃した」「仕事やプライベートが充実しすぎた」「年齢に急に焦りを覚えた」という理由が主立ったものになるようです。これらは女性の社会進出が進んでいることに原因を求めることができます。さらに近年では若い世代にさえこの焦りが共有され始め、20代で婚活をはじめる女性も増加しており、近年の婚活市場のかつてない競争激化につながっているとみられています。
経済事情を反映する人気ランキング
結婚にまつわる社会情勢を理解したところで、冒頭に掲げた人気職種ランキングを振り返ってみましょう。トップには、堅実で安定した経済力があるとみられる公務員が選ばれています。続いて、2位の会社員は日本人男性の職種人口が最も多いため妥当なところです。そして医師は栄えある3位に位置しています。もうお分かりのとおり、医師が選ばれる理由は公務員同様、その堅実で安定した経済力にあります。
日本では公務員に象徴されるような、堅実で安定した職種に価値を見出す保守的な女性が昔から多数を占めています。実のところ、こうした安定志向は先進諸外国にはあまりみられず、日本特有のものです。日本の経済情勢をみると、欧米の先進諸国と比べて新興産業の伸びがないわりに、これまで堅実とされてきた自動車などの基盤産業の行く末でさえかなり先行きが危ぶまれています。それゆえにこのような特異なランキングが形成されつつあるようです。
医師がランキング上位に選ばれるそれ以外の理由としては、開業医の年収が高いこと、高い学歴が要求されること、社会的イメージが高いことなどがあるようです。
確実性が人気の理由に
婚活、そして結婚とは当事者の男女にとって将来のある可能性に賭けることですが、未来を予測することはたやすいことではありません。リーマンショックのような思ってもみなかった経済情勢の変化、米中のパワーバランスや中東情勢など外交事情の変化、人工知能(AI)などの科学技術の爆発的発達、コロナショック、さらに自然災害などの天災など、未来を占うファクターは無数にあります。そのため、各分野のエキスパートにとっても数十年後の近未来でさえ将来予測は非常に難しいものです。
ところが何をおいても、日本がこれまで経験したことのないような未曾有の超高齢化社会になることには全く疑問を差し挟む余地はありません。その意味において医師は安定性が担保される職種のひとつであり、非常に妥当性が高いものです。以上をまとめると、年収と確実性、そしてさまざまな尺度でみた社会的評価の高さが婚活市場で医師が人気である理由といえるでしょう。