第7回 サンセリテ×Guest対談
神谷 敬久 × サンセリテ青山

仕事への本音のアドバイスは夫婦の信頼関係あってこそ

トートバッグ専門ブランド「ROOTOTE」や、80年代に大流行し、今もなお幅広い世代から人気が高いソシアルキャラクター「MR.FRIENDLY」など、日本の雑貨市場で常に流行を生み出し続けているスーパープランニング。20代で同社を立ち上げ、現在でも第一線で活躍し続けている神谷敬久氏に、結婚についての考えを伺いました。

神谷 敬久

出逢いに大切なのは“パーセプション”

川部

数多くのコラボレーションで話題のトートバッグ、「ROOTOTE」(ルートート)ですが、起業されたころからバッグをメインに扱われていたのですか?

神谷

いえ、はじめはデザイン事務所として出発し、ほどなく雑貨を中心にオリジナルグッズの企画・製造を始めました。ユニークなヒット商品として「血液型キーホルダー」があげられます。その名の通り、AとかBとか血液型のアルファベットを形どったキーホルダーで、20年ほど前に大流行しました。その後、今も継続中の「MR.FRIENDLY」というキャラクターが生まれ、2001年にトートバッグ専門ブランド「ROOTOTE」がスタートしました。

川部

もともとはアパレルなどにご興味はあったのですか?

神谷

アパレルというよりも、とにかく絵を描くのが好きで、それでデザインの道を志しました。父が多彩な趣味を持つ人で、当時珍しかったものが身近にある環境で育ったせいもあるのかもしれません。車やテレビ、絵画などからアメリカの洗礼を受けましたね。

川部

なるほど。神谷さまが会社を立ち上げたのはいつ頃ですか?

神谷

27歳のときに起業しました。

川部

ご結婚はその頃に?

神谷

結婚は起業した後ですね。

川部

奥様との出逢いは……?

神谷

女房が兄の経営しているセレクトショップで働いているときに知り合いました。感性が合うことに惹かれ、2~3年の交際を経て結婚しました。

川部

交際やプロポーズは神谷さまから?

神谷

もちろん、そうです。

川部

奥様の第一印象は覚えていらっしゃいますか?

神谷

ずいぶん昔のことなので、細かくは覚えていませんが……(笑)。でも、とにかく惹かれる要因を持っていたんだろうなとは思います。

川部

会員さまにアドバイス差し上げることも多いのですが、「第一印象は3秒で決まり、そのうち90%の要員は身だしなみ」という言葉があります。今日の神谷さまも素敵なファッションですが、出逢われたころの神谷さまと奥さまも、きっとファッショナブルだったんでしょうね。

神谷

だといいんですが(笑)。でも、出逢いにはパーセプション(見た目、印象)は大事ですよね。こちらが望んでいる出逢いだからこそ、相手が求めていることは何なのかを追求する姿勢。結婚にしても仕事にしても、常日頃からチャンスを逃さないためには、パーセプションを意識する必要があると思います。

川部

確かに第一印象は、パーセプションなくしては磨かれません。これは仕事にも通じることですね。

神谷

そうですね。「ROOTOTE」はとくにコラボレーション商品が多いので、まさに出逢いこそが財産なんです。11月6日から発売開始した「HATARAKUTOTE」は、高速道路の横断幕を素材として活用した商品で、東京デザイナーズウィーク2010での先行販売では売り切れも出ました。これも首都高とトートバッグという、普通では考えられない出逢いがあったからこそ生まれた商品です。どんな出逢いもチャンスと考えれば、より良い相乗効果が出てくるのではないでしょうか。

川部

それには、思い込みや先入観にとらわれず、自分の勘や、ひとつひとつの出逢いを大切にして、柔軟に対応していったほうがよい結果を生み出すかもしれませんね。

神谷 敬久

結婚をプロに任せるのは合理的なシステム

川部

私どもは結婚に至るまでの「出逢い」をプロディースさせていただいているのですが、いわゆる「結婚相談所」に対して、どのような印象をお持ちですか?

神谷

僕たちの年代からすると、「結婚相手を探すって、わざわざ相談しすることなの?」というイメージがあると思います。でも、よくよく考えてみると、非常に合理的なシステムで、それを活用するのは賢明な選択ですね。昔と違って情報過多なこの時代、そもそもどんな相手を選んだらいいのかわからなくなっている人も多いのではないでしょうか。

川部

確かに、会員の方にどんな方と相性がよいのかをアドバイス差し上げる機会は多いですね。「知的」「容姿端麗」などの理想をたくさんお持ちの方も多いのですが、それらの理想が必ずしも相性につながるものではないこともあります。ですから、結婚生活が長続きするような「秘められた理想像」を引き出していくのも、私たちの大切な役割です。

神谷

なるほど。弊社の社員は半分以上が女性なのですが、30代でも未婚の割合が高いです。でも、だからといって切実な感じはしないんですね。みんな、仕事が楽しくて仕方がない様子でキラキラしていて、経営者としては嬉しい反面、結婚する年齢は年々高くなっているのかなと感じることもあります。

川部

女性の社員の方はいかがですか?

神谷

もちろん、女性も家族がモチベーションにはなっているのですが、産休や育児休暇を取るなど、女性のほうが働き方そのものの変化が大きいためか、男性のそれとは少々異なるような気がします。男性のモチベーションは「帰る家がある=安らげるベースがある」という安定感によるもので、女性は「たくさんのことをこなしている、高い充実感」という感じでしょうか。

川部

なんだか分かる気がします。一昔前は、結婚したら専業主婦になって欲しい、もしくは専業主婦になりたいという方が多かったのですが、今は男女問わず共働き志向が強くなっています。これは経済的な面もあるのでしょうが、それ以上に女性の「充実感」を重視しているのではないかなと思います。

神谷

女性社員は、企業にとっても大切な人材です。とくに弊社は女性がコアターゲットという理由もありますが、男性では思いつかないアイデアや業務の進め方を持つ女性視点を、大切にしていきたいと考えています。

川部

女性視点のものづくりという観点から、日ごろ心掛けていらっしゃることはありますか?

神谷

ファッション、雑貨の世界は流行の変化が激しいですから、時代の空気感やライフスタイルのクラスターは常に意識するようにしています。とくにトートバッグというのは基本が使いやすさや値ごろ感なので、その中にどれだけファッションセンスを取り入れられるかが問われますから。たかがトートバッグ、されどトートバッグといいますか、デザインや見た目にこだわるのはもちろんなのですが、製品の中にメッセージ性を持たせることも大切にしています。例えばコストはややかかるのですが、「エコラミ」という焼却時にダイオキシンの発生が少ない環境に優しいラミネート加工を施すこともメッセージのひとつです。

川部

パッと見ただけではわからないような部分にも、細かな配慮や工夫がなされているんです

神谷

また、オリジナルキャラクターの「MR.FRIENDLY」は、ただ可愛いだけのキャラクターではなく、「自然や人間、すべてのものと仲良くしよう」というソシアルキャラクターなんです。アジアを中心にライセンス提携したいというオファーも多いのですが、このメッセージをきりんと理解していただいたうえでないとなかなか難しいですね。ファッションやデザインを通じて、社会にきちんとメッセージを残していけるようなもの作りを目指します。

仕事に生かされる貴重な“本音のアドバイス”

川部

神谷さまの会社で創っている商品は女性がコアターゲットということですが、奥さまからお仕事に関するアドバイスを受けることはあるのですか?

神谷

あります、あります。女房は直接業務に携わっていないのですが、むしろ僕のほうから意見を求めることもあるくらいです。女房のアドバイスはユーザー目線ですよ。「つまり、あなたは効率化させたいのでしょ。それはプロダクトアウトよ。」など、これがまた非常に的確でして……ぐぅの音も出ない(笑) ちょっと悔しく思うこともありますが、経営者になると仕事でもプライベートでも、アドバイスしてくれる人が本当に少ないんです。結婚前から起業していたこともあり、ズバッと厳しいアドバイスをしてくれる女房には感謝しています。

川部

鋭いアドバイスも、互いの信頼感があってこそですよね。

神谷

そうですね。これほど本音の意見をもらえるのは、やはり夫婦だからこそかなと思います。ものづくりをしていると、どうしてもどこかで我々のやりやすいように考えてしまっているときがあるんです。それをユーザー視点で「それでは売れないわよ」と言ってくれるのは、ありがたいですよね。

川部

では奥様はいちばん辛らつだけど、信頼できる第三者ですね。

神谷

ええ。仕事でもなんでも、第三者からの見え方を知るのは大切です。結婚のご縁をプロに任せるのも、そういう意味合いが強いと思うんです。単なる効率化ではなく、自分を客観視できる機会としてサンセリテさんなどを活用されるのは、有効だと思いますよ。

川部

神谷さまはご夫婦間のコミュニケーションが充実してるように見受けられますが、ときには夫婦喧嘩ということも……?

神谷

ありますねぇ(笑)。でもうちの場合、とことん言い合って翌朝にはケロリというケースが多いです。

川部

理想的な夫婦喧嘩ですね(笑)

神谷

実は夫婦喧嘩ってAB型なので、なんとなく相手の思考がわかるんですね。「こうした方が、丸く収まるかな」など、AB型特有の性格みたいなものが分かっているのでやりやすいでというのはあるかもしれません。

川部

神谷さまが意地を張っていてもすぐに見透かされてしまうとか?

神谷

そうですね。だからやっぱり女房には頭が上がらないんです(笑)。

川部

結婚生活がうまくいってらっしゃるご夫婦には、そういう方が多いですよ。

混沌とした食卓は家庭料理の魅力のひとつ

川部

神谷さまが奥さまと結婚した理由、そして結婚して良かったなと思うことはなんでしょうか?

神谷

結婚した理由は、やはり優しさですよね。私自身を叱ってくれるのも優しさのひとつでしょうし、他人などに対してもまんべんなく優しい。そういう点は魅力であり、尊敬できる点ですね。それと結婚前には分からなかったのですが、料理が上手なのには驚かされています。

川部

結婚後にそれがわかったなんて、嬉しい誤算ですね。どんなお料理が得意なんですか?

神谷

なんでも美味しく作ってくれますね。遅く帰っても家にあるものでちゃっちゃと作って食卓に出てくるのには、いつも感心させられます。レンジで温めているだけかなと思ったけれど、そうではない。段取りがいいんですね。段取りのよさや、手持ちの材料で料理を仕上げる創造力などは、自分自身のものづくりや会社経営にもつながる部分があり、尊敬しています。

川部

それだけ、奥さまのお料理がお上手なんでしょうね。

神谷

外食をしても「隠し味は●●ね」とすぐ分かるし、その味をうまく家庭風にアレンジして食卓に出してくれることもあります。僕はまったく料理ができないので、とにかくすごいなぁと思うばかりです。

川部

奥さまの手料理でお好きなものは何ですか?

神谷

う~ん、色々ありますが、卵焼きですかね。

川部

会員さまの中には、料理が苦手という方も多いのですが、ひとつでもいいから得意料理を作ってくださいとアドバイスを差し上げているんです。

神谷

相手を思いやる気持ちがあれば、料理は自然と上達していくのではないでしょうか。正統派ではなくても、家庭料理には店と違う家庭ならではの美味しさがあると思うんです。洋食を食べていても「ちょっとだけラッキョウがつまみたいな」とか、和洋折衷の献立だとか、外食ではできない一見ミスマッチな食卓が、家庭の味の魅力だと思います。

川部

夫婦長続きのコツには、味の好みが合うというのも重要ですね。

神谷

それは言えますね。

川部

ご夫婦で外食を楽しまれることも多い?

神谷

共通の趣味といえば、やはり食べ歩きでしょうね。今は蕎麦に凝っていて、あれこれ情報収集して食べ歩いています。僕はお酒が飲めないので、食事に行ってもなかなか場が持たないのが悩みです。食事だけだとすぐに食べ終わってしまうので、話し足りないときには「お酒が飲めればなぁ」と思うこともしばしばです。

夫婦長続きのコツはリスペクトと、ほめ言葉

川部

神谷さんのお話からはとても温かな夫婦像が目に浮かびますが、夫婦が長続きするコツはなんでしょうか?

神谷

難しいことですが、やはりお互いをリスペクトすることではないでしょうか。先ほど申し上げた手早に料理を作ってくれるということはもちろん、鋭い指摘をしてくれる点も尊敬している部分ですね。それと知り合いの社長に言われたのが「女性と会ったら、とにかくほめろ」ということ。ゴルフに行ったらキャディさんをほめ、家に帰ったら女房をほめ……。自分でもなかなかできませんけれども(笑)

川部

でも実際、女性をほめることは大切なんですよ。「ほめたら付け上がるんじゃないか」なんて考える方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。ただ気持ちよくその日を過ごせるだけです。女性はほめられると、どんどんきれいになって、笑顔になります。

神谷

笑顔を見せてもらえると、こちらまで気持ちよくなりますよね。

川部

そう、笑う門には福来るです。口角が上がっていると前葉頭が活発になると、脳科学でも証明されているらしいですよ。分かりきっていることでもほめた方が、より良いコミュニケーションにつながるんです。

神谷

僕ももっともっと、料理をほめないと。

川部

そうですよ(笑)。最後に、弊社の会員さまへアドバイスがあればお願いします。

神谷

仕事に対しても結婚、恋愛に関しても、将来的にこうなりたいというイメージを大切にしてください。イメージがあれば、それを実現するためにがんばれるはずです。それと、第三者の意見を参考にしながら客観的な自分を知り、長続きする縁を見つけてください。それにはサンセリテさんのようなシステムは、非常に有効だと思いますよ。

神谷 敬久

Guest Profile

株式会社スーパープランニング 代表取締役

神谷 敬久(かみや たかひさ)

1951年、静岡県浜松市生まれ。
アパレルの企画販売に従事後、独立し、スーパープランニングをデザイン事務所として浜松市で開始。
1984年、株式会社スーパープランニングを設立。オリジナルグッズの企画・製造・卸を本格的に始める。
1985年、東京スタジオを渋谷区代官山に開設。
1988年、ソシアルキャラクター「MR.FRIENDLY(ミスター・フレンドリー)」発表。
2001年、トートバッグ専門ブランド「ROOTOTE(ルートート)」をスタート。ROOTOTEの真っ白なトートバッグをキャンバスにみたてた一般作品公募の「トート・アズ・キャンバス デザインアワード」が、2004年度 GOOD DESIGN賞を受賞。
2007年、ROOTOTEの専門店「ROOTOTE GALLERY(ルートート ギャラリー)」1号店を代官山にオープン。
2010年11月現在、ROOTOTE GALLERYは、国内13店舗、台湾4店舗を展開している。

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