常連のお店を3軒持っていれば自分のペースで出逢いを演出できる
食に関する若き達人として、メディアを中心に活躍中の来栖けいさん。昨年は自らが経営、サービスをおこなうレストラン“エキュレ”を開店し、食に対する新境地を開きました。今回は来栖さんに、食が演出する素敵な男女の出逢いについて、お話を伺いました。
食体験は“消える”のではなく目に見えない形で蓄積される
川部
美食の王様としてメディアで大活躍の来栖さんですが、食べ歩きを始められたきっかけを教えていただけますか?
来栖
「食」そのものに興味を持ったきっかけは、5歳頃にみた飴細工ですね。もともと僕の両親は食べることが好きで、下手なものを食べるくらいなら、普段は我慢してでも、良い食事をしようという考え方でした。そんな両親ですから、僕も小さい頃から、食べ歩きにはよく連れていってもらったんです。
川部
小さい頃からの経験が、今こうしてお仕事になっていらっしゃるんですね。
来栖
経験って、目には見えないけれどもすごく大切なことだと思うんです。今、若い子でも洋服にはお金をかけている子が多いじゃないですか。でも、洋服には15000円かけられるのに、食事にかけられないのは何でだろうっていつも思うんです。
川部
ファーストフードやコンビニばかりで済ませてしまう方は、若い人に限らず増えていますよね。
来栖
洋服や趣味と同じだけのお金がかけられないというのは、食をそれ以下にしかとらえていないのではないかなと。いつも不思議に思うんです。
川部
食事は食べたら消えてしまうと考える方も多いのかもしれません。
来栖
形が残るお金の使い方は確かにわかりやすいけれども、食の経験値はそれ以上の価値を持っていると、僕は思っているんです。美味しいものを楽しんだ記憶は、何物にも変えがたいじゃないですか。
川部
確かに、経験値をある程度積まないとわからない違いってありますよね。音楽や美術鑑賞なども、そうかもしれませんが……。
来栖
そう、そして経験値を積んでこそ、入らずとも美味しいお店がわかる「第六感」のようなものも生まれてくるんです。僕の場合は、お店の外観だけではなく、雑誌なんかで掲載された料理の写真でも「このお店は良さそう」とピンと来ることがあります。
川部
来栖さんの著書などでは、必ず「どのメニューが美味しい」とはっきり紹介されていらっしゃいますね。
来栖
僕は本に限らず、「あそこのお店は美味しいよ」とは言わないんです。「あそこのお店のこれが美味しい」と言います。お店の評価とメニューの評価は別だと考えているんです。10皿すべてを点数になおしたら、すべてが同じ点数とはいえない。別に分けるのは当たり前かなと。
川部
そのお考えが、著書にも現れているんですね。
来栖
お店の紹介をするならば、どのメニューが美味しいのかを紹介してんかったら、失敗する可能性もある。もちろん自分で何を食べるか選ぶ楽しみもあると思いますが、おすすめのメニューまで明示することで、美味しく思える確率はかなり上がると思います。
川部
なるほど。
来栖
それと、僕は本を書く際には取材は一切しません。
川部
え?本を著すには取材が必要に思いますが……。
来栖
いえ、著書ではすべてプライベードで食べた経験を書いています。食事中のメモも、ほとんどメニューの正式名称だけです。世の中には完璧にメニューを書いている本がない。例えば「●●のロースト ▲▲のソースで」というメニューがあったとしたら、僕はローストと▲▲の間はスペースなのか、中黒(※注:「・」のこと)なのか、スペースは半角なのか全角なのかまで気になるんです。一番大事な料理名と価格をきちんと抑えておきたいんです。
川部
メニュー名のメモだけで、あれだけ詳細に文章を書けるんですか?
来栖
メモは簡単な整理だけしたら放っておきます。3ヵ月以上経ってそのメモを見返してみて、そのメニュー名を見るだけで「あぁ、こんな味だった」と思い起せるものしか本には掲載しません。自然に淘汰している感じですね。時間が経っても覚えている味は、それだけ強烈なインパクトがあったことだなとわかりますから。
川部
時間がフィルターの役割になっているんですね。そんな来栖さんの情報だからこそ信頼できるという読者の方も多いと思います。
若手シェフを、同じ立場から応援したかった
川部
来栖さんは、これまでの経験をもとに、昨年“エキュレ”を開店されました。
来栖
おかげさまで、何とかまだ続いています(笑)
川部
エキュレでは、有望な若手シェフのお料理はもちろん、来栖さんが厳選されたパンやスイーツを楽しめるのも特色のひとつですね。
来栖
現在、エキュレでは全国5種類のパンを用意しているけれども、1つのお店につき1種類のパンが原則です。例えば、ブランジュリ タケウチのパンを使いたいお店はいくらでもあるけれども、僕はその中でもオリーブのパンしか使いたくない。
川部
先ほどおっしゃっていた、「●●のお店の◎◎が美味しい」を実践されているのですね。
来栖
気に入ったお店はたくさんありますが、その中でも「この商品」というのがあって、それしか使いたくないんです。そのスタイルは僕にとって必然的。斬新とは言われるけど、当たり前のことなんです。
川部
これまで食べる側だった来栖さんが、なぜ食を提供される側に回られたのですか?
来栖
まずは若手シェフの登竜門的な場を提供したかったというのが大きいです。レストランを開店するには、すべてを自分で準備するなんて不可能に近いと思います。 資金も必要だし、それ以外の準備も煩わしいことがたくさんありますから。そのため、オーナーが別にいるとか、オーナーでなくとも協力者がいるという形が多いんですが、それだとメニュー構成などすべてがシェフの思うまま、という訳にはなかなかいきません。
川部
オーナーの意向などを反映しなければならないシーンが多少なりとも出てくる、と言うことですね。
来栖
そうです。その前に自分の力を存分にふるえる場所が必要ではないか、そしてそれは自分がもっと年をとって「若い子たちのために」というのではなく、対等の立場で作りたいなと考えて、昨年エキュレを開店したんです。「誰かに手伝ってもらった」とは言われたくないので、資金繰りからお店の内装まで、すべて自分でやりました。
川部
エキュレでは、1年ごとにシェフが変わるとか。
来栖
そうですね、登竜門的な場ですから、期限を決めてシェフに来てもらっています。
川部
シェフは来栖さんが「この人だ!」という方をあたられているんですか?
来栖
もちろんボクからアプローチすることもありますが、どこのお店も1番上に立っているシェフ以外の実力はわかりにくいので、ホームページで募集もしています。「やってみたい!」というような人がいれば、ぜひとも名乗り出てほしいです。もちろん、誰でもいいわけではないのでいろいろ審査はありますが。
川部
お料理のジャンルは、やはりフレンチですか?
来栖
いや、それもとくに限定していません。フレンチでも和食でも中華でも、なんでも良いと考えています。
川部
若くて可能性を秘めている方々にとっては、とてもすばらしいチャンスですね。
来栖
やるんだったら僕でなくてはできないことを、と思ってやっています。ある意味、提案の場だと思っています。例えばエキュレでは食後はデフォルトでコーヒーをお出しします。嫌いな方に、むしろ飲んでいただきたいんです。女性の方は意外にコーヒー嫌いが多いのですが、エキュレのグラン クリュ カフェを飲んで概念が変わった人もいらっしゃいますよ。
直感で気付く相性は出逢わなければ、わからない
川部
レストランにいらっしゃるときは、お一人でいらっしゃるんですか?
来栖
いやいや、よく友達を誘っていきますよ。僕は友達の9.7割が女性なんです。女性といるときの方が楽なほどで、自分は半分女性ではないかと思うくらい(笑)
川部
女性と話しているときに気をつけていることはありますか?
来栖
とくにないですね。先ほど言ったように、むしろ女性との方が話が合うし、女性からも「気を使わなくていいのでラク」と言われることもよくあります。
川部
スイーツにもお詳しい、女性から見たら警戒されない感じでしょうね。
来栖
そうかもしれません。だから、よく「女性を食事に誘うとき、どんなレストランに誘ったらいいか気を使う」という話を聞きますが、逆に僕はどんどん誘ってしまうので「気を使う」ということはあまりないですね。でも、誘ったらきちんとこちらが支払ますから、もう赤字の連続です(笑)。
川部
そうすると、女性に対して恋愛感情があるとないの違いはどんなところですか?
来栖
う~ん、直感ですね。好きなタイプはあるけれども、それが付き合う相手とは限らない。理想はガッキー(新垣結衣さん)だけど、必ずしも似た人とお付き合いするわけではないですね(笑) ちなみに、サンセリテさんでお相手を紹介される際には、やっぱり「ガッキー似の人がいいです」という好みなども聞いていただくことはできるんですか?
川部
そうですね、プロフィールシートには上半身のお写真もありますし、好みの外見を伺うことはもちろんあります。でも、結果的には外見ばかりにとらわれない方が、ご成婚につながる傾向がありますね。来栖さんは外見以外で「ここだけは譲れない」というポイントはありますか?
来栖
最低限、食べ物に興味がないのは論外ですよね。詳しくなくてもいいんですが、興味がない、何でもいいのでは、やはりきついですよね。
川部
なるほど。例えば料理がすごく下手な方だったら?
来栖
それは仕方がないですよ。前提として、料理に興味がなくて苦手というのはだめですが、食べることや料理が好きで、それでも下手というのは仕方がないですよ。
川部
エキュレでも、カトラリーひとつとっても非常にこだわりを感じますが、そういうセンスをお相手に求められることはありますか?
来栖
そもそも、趣味嗜好が合うかどうかも、直感的に感じる部分だと思います。話が合う、合わないというのも、おそらく趣味やセンスがにじみ出てくると思うんです。だから相性は実際に会ってみないとわからないのではないかなと。
川部
来栖さんは結婚願望はお持ちですか?
来栖
ありますよ。結婚したいですね。例えば同棲という方法もありますが、同居だけではよくないと思うんです。同棲と夫婦は違う重みがありますから。仕事をしている場合、同居だけだと紹介しづらいですが、結婚していればきちんと公にできる。きちんと“夫婦”という形で、パートナーを紹介したいですね。
川部
結婚生活に求めていることはありますか?
来栖
相手が仕事をしたければ、それは続けて欲しいですが、夜は少しでもいいから、一緒にゆっくりできる時間があるといいなとは考えています。
川部
少しでもいいから、二人の時間を作るというのは大切ですね。結婚相手として、どんな方が理想的ですか?
来栖
理解し合える人がいいですね。仕事でもなんでも。一緒にいろいろなことを楽しみたい気持ちはあります。食べることに限らず、いろいろな価値観や感性が似通っている方がいいとは思います。あとは、沈黙が気にならない、良い意味で空気のような存在の人ですかね。僕は話好きで沈黙になったことはありませんが(笑)、一緒にいて違和感のない人。しゃべっていようが、お互い仕事をしていようが自然でいられる人ですね。
川部
無理をしなくて済む相手、というのは結婚において重要なポイント。私も会員様にアドバイス差し上げることがよくあります。ちなみにお子さんは欲しいと思いますか?
来栖
欲しいですね。昔は2人か4人がいいと何となく考えていたんですが、最近、自然と「子どもの数は1人がいいな」と考えることが増えてきました。きっと僕は親ばかになると思うので、1人に集中できる方がいいだろうな、と(笑)
川部
子どものことに自然に思いを馳せるということは、結婚に対する気持ちが現実的になってきたのかもしれませんね。プロポーズをされるときは、きっと来栖さんならではのサプライズを用意されるのでは?
来栖
どうでしょう(笑)。日頃から愛情を伝えるタイプなので、冗談かわからないようなプロポーズをしているんじゃないでしょうか。なりゆきに任せて、ぽろっと言うタイプです。
3軒の“常連店”があれば女性をリードできる
来栖
今日もとあるご夫婦と一緒にお昼を食べたのですが、夫婦にとって食が合うか合わないかって、すごく重要だと思います。記念日はお互いに好きなもので楽しめるでしょうし。
川部
そうですね。デートもプロポーズも、男女の関係で食が関係するシーンはたくさんあります。会員様で、デートの際にどんなレストランに行こうかと相談される方も多くいらっしゃいます。
来栖
デートで言うならば、男性が優位に立てるお店のほうが良いと思います。男性は絶対に常連を持っていた方がいいです!やはりお店だって、初めての人と常連では出すものが違うし、それは当たり前だと思うんです。どんなジャンルでもいいから、1軒でも常連のお店があれば、そこでは男性が自分のペースに相手をもっていけると思います。3軒あれば和と洋、バーという感じでバランスよく、相手を飽きさせずにリードし続けられるのではないでしょうか。
川部
確かに、女性に「何が食べたい?」と聞いてもなかなか答えにくいことも多いです。レストラン選びに関しては、男性がリードをした方が自分のペースで、場の雰囲気を持っていきやすいと思えます。
来栖
エキュレも、たくさんの常連の方に支えられていますが、常連の方には絶対にメニューやデザートが重ならないようにしています。だから極端な話、一晩でテーブルごとに全く違うメニューばかりを出すこともあるんです。デザートに関しては、僕がひとつひとつ選りすぐりのお店に買出しに行っているので、非常に手間はかかりますが、それこそがエキュレの特徴ですから手を抜くわけにはいきません。だから、「エキュレ=来栖けいプロディース」とは言われたくないですね。「プロディース」というような軽い言葉で片付けられたくはありません。些細なことからサーブまで、本当にすべてを切り盛りしているので。
川部
来栖さんの説明を受けながらお食事ができるのは、それだけでも楽しそうですね。会員様のデートにも、ぜひおすすめさせていただきますね。
来栖
7月からは土日のランチとティータイムを始めますから、より多くの方に楽しんでいただけると思います。ぜひたくさんの方に、いらしていただきたいですね。
Guest Profile
株式会社スーパープランニング 代表取締役
来栖 けい(くるす けい)
1979年茨城県出身。これまでに1万軒以上のお店を食べ歩いた「美食の王様」として数々のメディアで活躍。2004年に刊行した『美食の王様 究極の167店 珠玉の180皿』(筑摩書房)では、多くのグルマンや料理人に衝撃を与えた。 2009年10月、若手シェフの育成と料理業界の向上を目指した新型レストラン”エキュレ”を開店。現在もお店に立ちながら、鋭いグルメ評を各種メディアで展開中。